夢か幻かうたおに鎮江突撃大作戦
(ハードボイルド風、あるいは赤川次郎調)

ぐるるるるるるるぅ・・・・。

威嚇しているブルドッグのような声がする・・・。
当然声ではない。

うどんや味噌汁だと「くぅん、くぅん」とでも言いそうに喜んで受け付ける。

それ以外は、ぐるるるるる、である。

何の事はない、僕のおなかの調子で、別にぴぃひゃらぴぃひゃらお祭り騒ぎ
をやってるわけではない(失礼)のだが、何か、普通ではない。

そりゃ、そうやわなぁ・・・。



ここへ来て随分寒くなり、スケジュールも過密で、体調だけは気をつけないと、と思って
いたのに、何だか調子が悪かった。
過去の例から行くと必ず熱を出すか、口中荒れ放題になるパターンである。
寒気もする。
火曜日の日中、雨が降っていて、前に軽く見て大熱を出した経緯もあったので
慌てて上着を羽織って仕事をした。

まぁ、まだ今日、明日とあるし、風邪薬でも飲んでゆっくり休めればいい。

その日の夜は用事があったけれど、そんなに長くかかるはずもなく、
ゆっくり休めるはずだったのである。

・・・でも、結局水曜の朝を迎えてしまうことになった。
気力で起きていたとしかいいようがない。

水曜の仕事を大幅に縮めて少し寝ることにした。
そして少しの仕事をして、次の日の準備にかかる、

そう、再び向かうのだから。

仲間は5時には集まり、出発するというので4時には家を出なければならず、早い目に寝なければならなかった。
でも、仕事のだんどりや準備、その他色々しているうちに結局いつもと変わらない時間になる。
それでも少しでも目を閉じなきゃ、と無理矢理アルコールを飲み、横になる。
変な時間に睡眠をとったのでいつまで経っても眠ることは出来ず、そのまま4時前。
母親が気にして、声をかけてくれた、
こんな時間に、ありがたいものである。

パンを少しかじり、コーヒーを飲む。
そろそろ出なきゃ。

AM4:00過ぎ
松阪の自宅を出る。

AM4:25頃
道がすいていて(あたりまえだが)早くに最初のメンバーと落ち会える。

AM4:50前
少し早すぎる時間に集合場所の近くまで来る。
そうこうするうちに、1台車が見えてくる。
仲間の車だ。

AM:5:00前
ほとんどがそろう頃空を見上げると、まさに降ってくるのじゃないかと思うくらい星が美しい。
何度もこの場所で星を見上げたことはあるが、こんな時間は初めてか、と苦笑する。

AM5:10頃出発。
途中のコンビニエンスにて、車で向かう最後の仲間を拾う。
心配したが元気そうだ。
車は高速に向けて走る。
もう今日のうちにまたあの場所に居るとはとても思えない。

あの場所、そう、中国に。

今回この作戦に関わるのは全部で11名。
全員無事で帰れるだろうか??

AM:8:00前
途中一度休憩を挟んだだけで、順調に関西国際空港に着き、
車も預けて、残りの仲間を待つ。
携帯に連絡が入り、じきに来るらしい。

全員がそろい、それぞれの手続きをすまし、空港に入る。
相変わらず、持ち物検査でひかかるものが出てひやひやしたが、
そのまま事なきを得る。

AM:10:20
予定どおりフライト。一路、中国に向かう。

行き道は気流の関係で2時間と少しかかるがあっという間である。
中国との時差は1時間。
中国時間でPM12:00前にはもう上海空港の外に出ていたと思う。

あまりにあっと言うまで、今回の作戦のことを忘れさせられる。
周辺はあの時のままで、「あの時」は夜だったことを思い出す。

バスに乗り込み、作戦が決行される地、「鎮江」に向けて走り出す。
PM1:00頃、昼食のため途中で降りる。
機内食が出たので、丁度いい頃の食事である。

1時間くらいの食事時間だっただろうか、皆この後のことを思ってかアルコールを口にするものは一人も居なく、暖かなお茶を手にしていた。

その日泊まるホテルに着いたのは5時過ぎだった。途中踏み切りに捕まり、長い時間足留めを食ったのを含めても順調すぎるくらいの時間に着くことが出来た。

久しぶりの街を楽しみたい衝動にかられるが、この後強行される旨を皆で確認の時とした。
一通りの確認だけで、もう時間を迎える。

この後は大きな組織の中に紛れることになる。
仲間の2名は組織の中枢に送られることになる。
仕方ない。無事に脱出出来ることだけを願う。

警察の先導で組織は作戦が決行される迎賓館に向けて動き出す。
10数台のバスが連なり道を横切るのは見事な光景である。
皆不安を隠せなかったが、先の2名はもっとだっただろう。

バスが着いた。
PM6:00過ぎの事である。
いよいよ組織の面面と顔をあわすことになる。
中に紛れて会場に雪崩込む、400名近いと思われる者達がほとんどが席に着きそろっている。
予想以上のツワモノのようだ。

僕たちが着きまもなく、宴は始まる。
この宴の中、作戦は決行される。

中枢に送られた2名が視界に入るので気をつけることにした。
顔色が悪い。大丈夫だろうか。

しばらくすると今回の大きな組織のトップがこちらにもやって来た。
緊張感が走る、
何か、確認しに来たのか?
それとも送られた2名がへまをやったのか?

愛想よく話しだけで、トップはここを離れまた違う場所に向かう。
緊張がとかれたその直後、
作戦は決行された。

覚えていないが、PM7:00を過ぎたくらいでなかったか?
その夜の最後のほうに予定されていたはずの作戦であったが、
ダイスは振られたのである。
2名もちゃんと合流して加わる。

・・・予想以上の手強さだった。

しかし、作戦は終え、後は無事なる脱出だけであった。

11名、皆無事のまま、またバスに乗り込む。

よかった、笑顔さえ見える、このままホテルに着けば後はどうにでもなるだろう。
それにしても手強かった、
男とも女ともみえる者があちらのボスを困惑させていたときはどうなるかと思った。
もうこの場を離れたい。
とりあえず、祝杯をあげようではないか。

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鎮江大作戦はすっかり終わったかのように思えた。
いや、終わったのである。

しかし、翌朝になっても強者達の本領発揮で、すっかり滅入ってしまうことなど考えるはずもなかった。

何しろ上海で見た「沢の鶴」と「ステテコ」、
商品を頼まず場を占有する者、には、完全にグロッキーであった。

・・・それでも、
作戦の翌日に暖かな舞踊と歌で迎えてくれた子供達にただただ救われる思いで、
1200名からの「ご挨拶」は一生忘れないことであろう。


そうして、僕のおなかはまだ威嚇しつづける、
でも、こうして暖かな味噌汁をまた口に出来ることが何よりの喜びだった。

・・・ところでこの大作戦、成功だったのかどうかは誰も知る由もない。

以上、だいぶ割愛(笑)

・・・ (^_^;)はい。この文章は忘れて、とっととフォトレポートに参りましょう。