出会い交流ハーモニー1

カナダに到着

緊張感、高ぶる心
念願の演奏旅行スタート


 
鼻の奥をツンと張った空気が刺激します。ゴールデンウイークの生温かい空気とは全く違うその空間に、メンパーの全員が何らかの決断を強いられていることを感じつつ、バスに乗り込みました。四月二十八日午後八時、やっと沈もうとする太陽を背負うようにトロントの街が遠く揺れています。
 ついにやって来た!十五時間の飛行で身体は少々くたぴれ気味だが、心はこのカナダで、合唱の本場で、われわれのすべてを出し尽くさなければならないという緊張感で、早くも高ぷってきています。
 参加者四十六人のみならず、参加できなかったメンバーの切実な思いも一緒に海を渡り、こうしてカナダの地に降り立ちました。
 「必ずすべてを、このカナダに残してこよう」。思い返ぜぱ三年前、シェーファー氏と固い握手を交わして別れた時から、この思いが言葉にならない決断として胸に留まっていたのかもしれまぜん。
 日本の片田舎の合唱団がカナダの世界的な作曲家、シェーフー氏にあてた一枚の手紙。「私たちのために曲を書いていただけませんか?」。その手紙が海を渡ったときからこの夢のような話は始まりました。
 委嘱作「seventeen haiku(十七の俳句)」の完成、シェーファー氏の来日、コンクール日本一、委嘱作世界初演・・・。そして、氏が帰国する際、握手とともに残した「ぜひカナダへ」の言葉に、知らず知らず私たちの思いは、はるかカナダを見つめるようになっていました。
 「今までの思いもすべて残してこよう」。やみに浮かんだトロントの摩天楼をパスの窓からぼんやり眺めながら、ひそかにこう決断しつつ、念願のカナダ演奏旅行はスタートしました。

 

トロントの中心部。オンタリオ湖畔に摩天楼や世界一の高さを誇るCNタワーなどが立ち並ぶchunichi1_photo.jpg (18428 バイト)