「17の俳句」を初演した3年前。
団長が作ったチラシ、シェイファー氏の作品のみを演奏した「第27回音楽会」には<世界初演>と銘打たれていました。

まぁ、大げさなと笑いましたが、
こんな田舎の合唱団が、全国大会で初めて金賞を頂いたのに勢いづいて「ダメもと」でお願いしたら新曲が出来てきて、こうして初演にまで至ったんだから、
それくらい大きく構えるンも、まぁええか・・・(⌒∇⌒)とも思ったものです。

それがこうして、まさか「うたおに」の演奏で海外で披露できることになろうとは、あの頃誰が想像したでしょう?

「風の馬」のあとのトロントでの舞台裏、
それら含め、色んな事がよぎりました。

衣装は前半と同じなので、提灯のセット以外は特に必要ありません。
男声陣は客席の明かりが消えたら、客席一番後ろから各々歌い出す手順になっていたので休憩が終わる頃、後ろに並ぶだけ。

「俳句」では男声の歌う「夢乱歩・・・」から始まります。
何の段取りもなく、その場で歌いたくなった団員が順に歌い、歩き出します。
初演の時は僕が最初でした。(ちなみに岐阜の未来会館もリージョンでの公演も僕じゃないです)
けど、練習の時も僕のことが多くて、この頃習慣(?)になってきてたかな・・・?
(余裕があって、これを裏切ってやるくらいのことが出来るとおもしろい?・・・(^_^;)
この日も段取りはありませんでしたが、僕が最初に歌って恥ずかしくないようなテンションに持っていかないと・・・、
片隅でそんなことを思いながらも、まだ少し複雑な気持ちで真っ暗になった客席の一番後ろに並びました。

通路は広く歌い歩くのに問題はないようでした。

明かりが落ち、
客席にも心地よい緊張感が満ちて、
いよいよ第1声です。

あれだけ動揺していたのに、不思議とこの時は自分を取り戻していたのも覚えています。
よし、はじめに歌うぞぉ!
(きちんと出来れば、これっておいしい部分なんですよぉ・・・出来ればね・・・)

第2曲は女声。
第3曲で、混声曲。コンクールで一番はじめに歌った曲です。思い出がよみがえります。
途切れることなく曲は進みます。

シェイファー氏の作られたこの曲はコンクールの講評でも再三書かれましたが、日本独特の俳句の持つ部分と、海外の作曲家がとらえた部分とが見事に融合したものとなっていて、この日のコンサートでも前半3曲とはまるで違った空間が浮かび上がり、会場全体を包んでいました。

歌い手の僕たちも、客席も大きな中の一部で、そこで起こっているすべてが音楽でした。
シェイファー氏のねらったものそのままが作り上げた、この時にしかない世界です。

全曲で30分ほどかかる「17の俳句」、いつもそうですが、カナダで初めて歌ったこの日もその長さを感じない、けれど一日という時間の経過をたったそれだけの中で見せてくれる、あっという間のものでした。

華やかな夏祭りの盆踊りもやがて静かな暗やみに包まれて、
終演。

「うたおに」が、「うたおに」の「俳句」を伝えきったこの舞台でした。

一人立ち上がり、二人、三人・・・と、スタンディングして終演した僕たちを迎えてくれたお客様を呆然と見ていたのを思い出します。

続く